世の中褒めロボ

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京アニ放火事件で規制の動きは起こるのか

 どうも、私です

 

 これを読んでいる方がいつ読んでいるのかわかりませんが、先日非常に痛ましい事件がありました。京都アニメーション放火事件です。
 多少なりともアニメを嗜む者として、いやそんな前置き抜きにしてもなんとも悲しく怒りに震える事件ですが、そちらの本筋については他に多くの方が語ってくださるでしょうし、ちょっと今回はこの事件と『規制』についてを考えてみたいと思います。

 

 

放火事件と規制

 事件と規制に何の関係があるのか。
 一体何が規制されるのか。

 どうやら報道によると犯人の男は事件直前に犯行現場近くのガソリンスタンドで携行缶にガソリンを40リットル購入し、それを台車に乗せて現場まで運んだそうです。
 そう、この携行缶。これを規制した方がいいのではないかという声が既にちらほら聞こえてきています。

 

携行缶とは

 あまり身近じゃない人も多いと思いますが、携行缶とはガソリンを保管しておける専用の缶のことで、ホームセンターなどで買えます。有人のガソリンスタンドであれば車にガソリンを給油するのと同じように、この携行缶に給油してもらえます。

 ちなみにセルフのガソリンスタンドでは携行缶にお客が勝手に給油することは禁止されています。実はセルフスタンドでも給油の許可は店員さんがカメラで見て手動で行っているらしく、携行缶に給油しようとすると注意されるようです。
 ただ正直セルフに関しては見逃されているケースも少なくない気がしますが……。

 

携行缶規制に意味はあるのか

 既に議論に上がりつつあるこの携行缶の規制。
 これは果たして本当に意味が、つまり『犯罪抑制効果』があることなのでしょうか。

 

全く意味が無いとは言わないが……。

 本題です。

 ガソリンを規制するわけにはいかないので、携行缶を規制する。
 携行缶への給油を禁止にする、または何らかの制限を設け厳しくする。

 これらの規制に意味はあるのか。

 

 まず、よく言われるように犯罪者は凶器が存在するから犯罪を起こすわけではありません。
 中にはたまたま手元に鈍器があったのでそれで殴ったような衝動的犯行もあるかもしれませんが、特に今回のようなケースでは明らかに害意ありきの犯行です。ガソリンが入手出来なかったとしても何らかの方法で事件にはなっていたのではないかと思います。

 

 でもガソリンが使われなければこんなに被害者が増えなかったのではないかという理屈には一理あります。
 しかし携行缶を規制したからと言ってガソリンを入手する方法が完全に絶たれるかというとそうではありません。

 

ガソリン類の入手方法は他にもある

 誰でも少し考えればわかることですが、携行缶を規制してもガソリンを入手する方法はあります。

 例えば灯油ポンプなどで自分の車やバイクのガソリンタンクから抜き取る。ポンプは100円で買えます。
 車やバイクを所有しているというハードルはありますが、原付バイクであれば中古で3万円ほど。タンク容量は大きいもので10L。免許は1~2日で取れます。
 タンクからの抜き取りを現実的に防ぐ手段は無いでしょう。

 

 また、ガソリンよりも危険性は低いですが灯油も火事を引き起こす危険物であり、こちらはポリタンクで誰でも購入が出来ますし今でも多くの家庭で暖房に用いられていることから規制は難しいでしょう。

 それから、知らない人も多いと思いますが一般のホームセンターなどで混合燃料というものが誰でも買えます。これは草刈り機やチェーンソーに使う燃料で、レギュラーガソリンとオイルを混ぜたものです。
 実験したわけではないので実際のところはわかりませんが、混合燃料は比率25:1や50:1などその成分の95%以上がガソリンです。同じくらい危険なのではないでしょうか。

 

規制することのデメリット

 これまで携行缶規制はあまり意味がないのではないかという根拠を挙げてきましたが、全く意味が無いとは言っていません。
 現状やはりある程度大量にガソリンを入手しようと思えば携行缶を使うのが一番手軽ですし、いくらか手間や障害が増えることで犯罪に使われる可能性もどこか見えない所でほんの少しは下がるのかもしれません。

 

 しかしガソリン携行缶は何も玩具なわけはなく、今も多くの仕事に使われています。それに対し何らかの規制を入れることによってそれらの仕事の生産性が下がる恐れがあります。

 「人命の話なのだから少しの手間くらい我慢しろ」という話もわかるのですが、先に挙げたように実際の効果の程に疑問があるのと、「生産性も立派な人命の話である」ということは考えなくてはなりません。

 

貧困は犯罪率を上げる

【人間関係は犯罪を防げるか?】第1回 貧困と犯罪 | テクルペ | 東北大学ポケットガイド

 様々な機関の研究で既に明らかになっているように、経済的に貧しい地域や家庭ほど犯罪率が高いことは既によく知られています。当然自殺率にも関係するでしょう。

 何かを規制することによる生産性の低下、経済的損失。それらはほんの僅かだったとしても全国の同業種全てに波及すると考えると少なくない影響が出る、かもしれません。

 

 人は誰しもショックなことが起きるとその目の前のことに思考が引きずられてしまいがちですが、「経済も間接的に人命を奪いうる」ように、直接見えない部分にも意識を向けて考えないといけないのかもしれません。

 

規制と言いたくなる気持ちはわかる

 今まで携行缶の規制はあまり支持しないという持論を述べてきましたが、一方で規制と言いたくなる気持ち、心理はよく理解出来ます。
 以前新幹線内で男が刃物で殺傷した事件のときなどもありましたが、何か大きく報道される事件があった時に何らかの対応対策を求める、求めずにはいられない。

 実際私達の社会で犯罪を完全に防ぐことは不可能ですし、その被害者になる可能性を完全に無くすことも不可能です。誰もがどこでも被害者になりうる、その恐怖心、不安感があるのではないでしょうか。少なくとも私にはあります。

 

 不安感があるのでなんとかしたい、効果の程は詳しく検証していないがとにかく悪そうなものを規制し、擬似的な安心感を得る。
 または事件そのものを何らかの「失敗」として捉え、失敗したのだからどこか改善しなくてはならないという心理も同時に働くのかもしれません。

 

 しかし個人単位が言うだけならいいのですが、実際にその「効果の程がよくわからない」ことを根拠に「市民の声」として批判を避けたい社会が本当に動いてしまうのが恐ろしいところで、あってはいけないことだと感じます。

 

 正直私が今までここで書いたことが全て合っている自信もありませんし、読んだ方にもこんなもの鵜呑みにしないでもらいたいのですが、是非規制や何やらを実行に移せる力を持っている賢い方々には、しっかりと数字に基づいた検証や説明を行った上できちんと効果的な対策を実行して頂きたいと願います。